「走らない」「順番だよ」の前に|療育の声かけで本当に大切にしたいこと

■ 私たちは、いつから「守らせる支援」を当たり前にしてしまったのだろう

療育の現場では、「走らない」「順番だよ」「静かにしようね」などの声かけを、肯定的な言い換えで伝えることが大切だと言われています
では、その“言い換え”のさらに奥で、私たちは本当に何を見ているのでしょうか

 子どもが走る。
 順番を抜かす。
 大きな声を出す。
 思い通りにいかず、泣く。

そんな場面に出会ったとき、
療育の現場ではよく、
「走らないよ」ではなく「歩こうね」
「静かにしよう」ではなく「今はお話を聞く時間だよ」
というように、してほしい行動を言葉にする関わりが大切にされています

これは、とても大切な視点だと私たちも考えています

ただ同時に、私たちがさらに大切にしているのは、
「言葉を言い換えたかどうか」よりも、その子の“今”を見ているかどうかです

 ・なぜ走ったのか
 ・なぜ静かにできなかったのか
 ・なぜ順番を待てなかったのか

そこを見ずに、
言い方だけを「正解」にしてしまうと、
結局また ルールを「守らせる支援」に戻ってしまいます

だから私たちは、
✅ 肯定的な言い換えも大切にしながら
✅ その背景にある気持ちや理由にも目を向ける
この両方を大事にしています

社会で生きていくために、ルールは必要です
守ること自体が悪いわけでもありません

けれど、ときどきふと思うのです

この子はいま、本当に“ルール”に困っているのだろうか?
それとも、もっと別のことで困っているのではないだろうか、と


■ 療育だからこそ、ルールより人を見たい

Blue Birdが大切にしているのは、
「行動を見る前に、その子を見る」ということです

・なぜ今、走っているのか
・なぜ今、順番を待てなかったのか
・なぜ今、大きな声が出たのか

行動だけを見れば、
「注意する」「止める」「正す」になります

でも、その奥にある
不安・焦り・わからなさ・助けてほしい気持ち
を見ようとすると、
関わり方は自然と変わってきます

「何してるの!」ではなく
「どうしたの?」と声をかける支援へ

「ルールより人を見る」という考え方の土台には、
“すぐ止めない”という、少し勇気のいる支援の選択があります

実際にどんな場面で、どんな想いで見守っているのかは、
こちらの記事で詳しくお話ししています
▶︎ 「すぐ止めない」が支援になるとき|見守ることで育つ子どもの力


■ 禁止より、意味を見たい

 噛む。
 叩く。
 物を投げる。
 逃げる。

どれも、表面だけ見れば「困った行動」です
そして多くの場合、
「ダメ」「やめて」「危ない」で止められます

でも、私たちはこう考えます

行動には、必ず“理由”があります

 ・言葉で伝えられない
 ・どうしていいかわからない
 ・不安が強すぎる
 ・助けてほしい

その理由を見ずに、行動だけを消そうとすると、
子どもは「自分はダメなんだ」と覚えてしまいます

禁止は、本当に簡単です
意味を見るのは、少しだけ手間がかかります

それでも私たちは、
“行動の奥にある困りごと”を一緒に見たいと思っています


■ 想定外を、否定しない場所でありたい

 遊具の使い方が、想定と違う。
 遊び方が、説明と違う。
 進み方が、大人の予想と違う。

そんなとき、
「違うよ」「こうするんだよ」と教えるのも一つの関わりです

でも、Blue Birdではもう一つの選択肢を大切にしています

「この子は今、何を試しているんだろう?」
と、まず見ること

大人の“正解通り”ではないけれど、
その子の中では、ちゃんと考えて、工夫して、挑戦している

想定外の中にこそ、
その子だけの「学びの道筋」が隠れていることがあります

大人の「想定」と、子どもの「発想」は、よくすれ違います
そのズレの中にこそ、学びの芽があります

「え、!?」と実際の現場で起きた“想定外”から見えてくる学びについては、
こちらの記事でご紹介しています
▶︎ 「それ、そんな使い方するの!?」から始まる子どもの学び


■ それでも、ルールがいらないわけではありません

ここは、誤解してほしくない大事なところです

 ・命に関わること
 ・安全に関わること
 ・他者の権利に関わること

これらは、迷わず止めます
ルールは、子どもを守るために必要なものでもあります

ただ私たちは、こう問い続けたいのです

「いま守らせたいのは、ルール?それとも、この子自身?」

守らせることが目的になってしまったとき、
その子の“困りごと”が、置き去りになってしまうことがあるからです


■ Blue Birdが、支援の中でいちばん大切にしていること

できることが増えるのは、うれしいことです
成長が見えるのは、やっぱりうれしいです

でも、それ以上に私たちが大切にしているのは、

 ・できないときに、どうするか
 ・困ったときに、どう助けを出せるか
 ・うまくいかない自分を、どう受け止めるか

という「人生の土台」になる部分です

「どこまで関わるのが正解なんだろう」
「寄り添いすぎかな?でも、突き放したくもない」

そんな“距離の取り方”に迷う場面については、
こちらの記事でも、やさしく掘り下げています
▶︎ 抱きついたりくっついてくる子は甘えすぎ?安心のサインと上手な距離の取り方

 正しくする前に、安心できているか
 我慢させる前に、困りごとは見えているか
 できるようになる前に、頼れているか

私たちは、そこを一番大切にした支援を続けています


■ 最後に|ルールでは守れない“育ち”がある

私たちはオープンから今日まで、
たくさんの「想定外」と出会ってきました

 思い通りにいかない姿
 遠回りに見える挑戦
 うまくいかずに立ち止まる時間

でもそのひとつひとつが、
ルールでは守れない“育ち”の瞬間でした

 止めずに見守った時間。
 注意せずに待った時間。
 想定外を否定しなかった時間。

その積み重ねの先に、
子どもたちは少しずつ、
「自分で考える力」
「切り替える力」
「助けを求める力」
を育てていきました。

年の瀬を迎えるにあたり、
次回は、今年の振り返りと、来年どんな場所でありたいかを、
みなさまにお届けしたいと思います

ルールより、
正解より、
“人”を見続ける場所であるために