発達特性のある子どもの「正義感」が孤立につながる? ― 正しさと人間関係の難しさを考える ―

INTRODUCTION

4月。

新しいクラス。
新しい先生。
新しい友達。

子どもたちなりに、頑張って "合わせよう" としていた時期が、少し落ち着いてくるのが5月後半から6月頃です

この時期になると、現場では少しずつ、

 「なんであの子はOKなの?」
 「ズルい」
 「ルール違反じゃん」
 「先生、あの子が……」

そんな言葉が増えてくることがあります

 集団のルールが見え始める
 不公平感が強くなる
 我慢の反動が出る
 注意や指摘が増える
 "正しさ" が前に出始める

さらに梅雨時期は、

 疲れ
 ストレスの蓄積
 集団疲れ
 感覚過敏の悪化
 イライラ

なども重なりやすい時期です

その結果、

「正義感」と「人間関係の摩擦」

が、少しずつ現実化してくる

発達特性のある子どもたちと関わっていると、この時期特有の難しさを感じることがあります

もちろん、「正義感」そのものは悪いものではありません

むしろ、

 不公平に気づける
 誠実であろうとする
 ルールを守ろうとする

という、大切な力でもあります

でも、その "正しさ" が、人との関係の中でうまく扱えないと、孤立やトラブルにつながってしまうことがある

そして難しいのは、本人には「悪気」がないことです

本人の中では、

「正しいことをしている」
「誰かのために言っている」

そんな感覚だったりする

だからこそ、このテーマは、とても繊細です

今回は、発達特性のある子どもたちに見られる「正義感」と、人との関係について

Blue Birdの "小さなヒーロー"、初登場のバードマンとブルバと一緒に考えてみたいと思います




バードマン

「悪いことしてるなら、止めなきゃダメじゃん!」

ブルバ

「うわ、出た。正義モード」

バードマン

「だって、ルールは守らなきゃいけないんだよ!」

代表

「そう思えるのは、とても大切な力だと思う」

バードマン

「え?」

代表

「"ズルい" とか、"それは違う" って感じられることって、本当はすごく大事なんだよ」

ブルバ

「でもさ、"正しいこと" 言ってるのに嫌われることってあるよね?」

バードマン

「それ、ずっと納得いかない……」

代表

「うん。そこが難しいところなんだ」

バードマン

「ルール守らない方が悪いのに?」

代表

「それも一つの事実」

代表

「でも、人の集団って、"正しさ" だけで動いてるわけじゃないんだよね」

ブルバ

「あー……空気とか?」

代表

「そう。タイミングとか、言い方とか、その場の関係とか」

バードマン

「えぇ……難しすぎる」

代表

「難しいよ。本当に」

代表

「大人の世界でもあるでしょ?」

 正論だけど言い方が強い人
 間違ってないけど孤立してしまう人
 "空気を乱す人" として見られてしまう人

ブルバ

「あー……あるかも」

バードマン

「じゃあ、"正しいこと" って言わない方がいいの?」

代表

「そうじゃない」

代表

「大事なのは、"正義感をなくすこと" じゃない」

バードマン

「じゃあ?」

代表

「"正義感をどう使うか" を学ぶ必要があるってこと」

ブルバ

「ヒーローにも、戦い方があるってこと?」

代表

「...そういうことかもしれないね」

バードマン

「……そっか」

代表

「正義感が強い子って、"困った子" じゃなくて、"頑張りすぎる小さなヒーロー" なのかもしれない」


「正義感」が強いことは、悪いことではない

発達特性のある子どもたちは、特性によって、

 ルールを強く守ろうとする
 「正しい/間違い」を明確に捉えやすい
 曖昧さが苦手
 不公平に敏感
 納得できないことに強いストレスを感じる

という特徴を持つことがあります

これは、本来 "悪いこと" ではありません

むしろ、

 誠実さ
 真面目さ
 責任感
 不正を見逃さない力

にもつながる、大切な特性です

ただ、その力の "使い方" が未成熟なまま強く出ると、時に他者を追い詰めてしまうことがあります

大事なのは、

「正義感が悪い」のではなく、"正義感の扱い方" が未成熟なまま強く出ると、結果としてトラブルにつながることがある

という点です

例えば、

 繰り返し注意する
 強い言い方になる
 相手の事情より "ルール違反" が強く見える
 周囲を巻き込んでしまう

など

本人の中では、

「正しいことをしている」
「誰かのため・みんなのために言っている」

という感覚だったりします

だからこそ、このテーマは単純な "善悪" では整理できません


「正しさ」と「人との関係」は別のもの

ここで大事になってくるのが、

「正しさ」と「人との関係」を分けて学ぶこと

です

特に発達特性のある子どもたちは、「白黒」では理解しやすい反面、"グレーの運用" が難しいことがあります

例えば、

 正しくても、言い方は選ぶ
 正しくても、タイミングがある
 相手にも事情がある
 「正しい」だけでは人は動かない
 誰かに任せた方がいい場面もある

こういう "人との関係の中での運用" は、とても高度なスキルです

そして実は、大人でも難しい

だからこそ、子どもたちに必要なのは、

「正義感をなくすこと」ではなく、
「正義感を社会の中でどう扱うか」を一緒に学ぶことなのだと思います

「あなたの正義感は大切」

でも

「その使い方は練習が必要」

という関わりが、とても重要なんですよね

そして実際、ここを丁寧に育てられた子は、

 不正を見逃さない
 弱い人を守れる
 ルールメイキングが得意
 誠実
 信頼される

という、大きな強みに変わっていきます


「正義感が強い子」が、孤立してしまうこともある

このテーマのさらに難しいところは、

「正義感が強い子」が、"加害側" にも "孤立側" にもなり得る

という点です

ルールを重視し、空気より "正しさ" を優先する子は、集団の中で浮きやすいことがあります

子どもの集団は、必ずしも "正しさ" だけで動いているわけではありません

時には、

 空気を読む
 なんとなく合わせる
 深く追及しない

ことで、バランスを取っている場面もあります

その中で、

 「それは違う」
 「ズルい」
 「ルール違反だ」

と強く反応する子は、

 「細かい」
 「うるさい」
 「めんどくさい」

と受け取られてしまうことがある

そして本人は、

「なんで嫌がられるの?」
「正しいことを言ってるのに」

となりやすい

そこから、

 「どうせ自分は嫌われる」
 「誰も分かってくれない」
 「もう関わりたくない」

と、二次障害的につながっていくこともあります

だからこそ、このテーマはとても慎重に扱わなければいけません


「正しさ」と「つながり」を両立する

支援で本当に大事なのは、単純な "社会性" ではなく、

「正しさ」と「つながり」の両立

なんだと思うんです

例えば、

 "正しい" と "伝わる" は違う
 相手を変える前に、関係づくりがいる
 100%正しくても孤立することはある
 「今ここで言うべきか」を考える
 正義を振りかざすと、人は防御する

こういう "対人の構造" を学ぶ必要がある

でも逆に言うと、ここを学べた子は強い

「自分の軸」は持ちながら、
「相手との距離感」も調整できるようになる

これは、大人でも難しいことです

だから、発達特性のある子どもの支援は、単なるマナー教育ではなく、

「自分の特性と、社会との折り合いをどう作るか」

を、一緒に考えていく営みなのだと思います


大人の世界にも、同じ構造はある

これは決して、子どもの世界だけの話ではありません

大人の世界でも、

 正論だけでは人は動かない
 正しい人ほど孤立することがある
 「正しさ」が攻撃性になることもある
 空気に合わせすぎると、自分を失う

そんな場面は少なくありません

そして時に、

 「あの人にも原因がある」
 「言い方がきつい」
 「協調性がない」

と、"孤立した側" に問題を集めてしまうこともあります

もちろん実際に、言い方や距離感の課題はあるかもしれません

でも一方で、

「正しいことを言った側」が悪者化される構造

も確かに存在します

逆に、

 「正義感が強い=素晴らしい」

だけで見ると、他者を追い詰める側面を見落としてしまう

だからこのテーマには、"どちらかが悪い" では片づけられない難しさがあります


Blue Birdとして大切にしたいこと

Blue Birdでは、

 「正義感をなくそう」

とは考えていません

むしろ、

 不公平に気づけること
 「おかしい」と感じられること
 誠実であろうとすること

は、大切な力だと思っています

ただ、その力は "使い方" を学ぶ必要がある

そしてそれは、子ども一人の努力だけで解決できるものでもありません

だからこそ、

 本人の感じ方を否定しない
 「正しい」と「伝わる」は違うと学ぶ
 グレーを一緒に言語化する
 周囲との橋渡しをする
 一人で抱え込ませない
 「困ったら助けを求める」を育てる

そういう支援が必要だと考えています

これは、単なる "マナー指導" ではありません

児童発達支援は、単に「問題行動を減らす場所」ではなく、

"正義感を安全に使えるようにする場所"

であり、

「自分の特性と、社会との折り合いをどう作るか」

を、一緒に考えていく場所なのだと思います


まとめ

「正義感が強い」という特性は、時にトラブルのきっかけにもなります

でも、それは "悪い特性" だからではありません

その子が、"正しさ" に真剣だからこそ、苦しんでしまうこともある

だから私たち大人に必要なのは、

 正義感を否定すること
 正しさだけを称賛すること

そのどちらかではなく、

「その子が、自分の感じ方を理解しながら、社会の中でどう生きていくか」

を、一緒に考えていくことなのかもしれません

子どもの支援を通して見えてくるのは、

「人はどうやって社会と折り合いをつけるのか」

という、とても本質的なテーマなのだと思います


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