381保健室 #4|お腹が空くとイライラするのはなぜ?

🍚 今日の「どうして?」

夕食の少し前。

さっきまで楽しそうに遊んでいたのに、
急に機嫌が悪くなる

 些細なことで怒る
 きょうだいとケンカする
 「イヤ!」が増える

でも、ご飯を食べたら、
いつもの様子に戻っている

そんなことはないでしょうか

「お腹が空いていたのかな」

私たちは、何気なくそう言います

でも、少し不思議です

どうしてお腹が空くと、気持ちまで変わるのでしょう?

お腹が空いたなら、
「ご飯が食べたい」と思うだけでもよさそうなのに

大人も、空腹のときに、
いつもなら気にならないことに腹が立った経験があるかもしれません

381保健室 #4は、
「空腹」と「イライラ」の関係を、身体と気持ちの両方から見てみます

そしてもう一つ、
子どもの「お腹すいた」には、どんな意味があるのでしょう?


🏥 今回の381保健室の案内役

おなか先生|お腹と栄養の案内役 🍚

食べたものが身体で使われる仕組みや、
お腹と脳のやりとりを一緒に見ていくよ

じりつくん|自律神経の案内役 ⚡

身体はいま、どんな状態なんだろう?
身体の働きと、毎日の過ごし方を一緒に考えるよ


🍚 身体は、ずっとエネルギーを使っている

子どもは一日中、

 走る
 考える
 遊ぶ
 話す
 笑う
 泣く

たくさんの活動をしています

そのためには、エネルギーが必要です

食べたものは胃や腸で消化され、
身体に取り込める形になっていきます

吸収された栄養は、
身体や脳が働いたり、身体が育ったりするために使われます

でも、エネルギーが必要なのは、
走ったり遊んだりしているときだけではありません

じっとしているときも、
眠っているときも、

 心臓を動かす
 呼吸する
 体温を保つ

身体は働き続けています

何もしていないように見える時間にも、身体はエネルギーを使っているんですね

食事から時間が経ったり、たくさん活動したりすれば、
お腹が空くこともあるでしょう

空腹は、食べることを促す身体のサインの一つです


🍚 \ おなか先生と身体の中を探検! /

では、私たちはどうやって、
「お腹が空いた」と感じるのでしょう

 お腹の中が空っぽになるから?
 お腹が「ぐう」と鳴るから?

そうした感覚も、手がかりになります
でも、空腹はそれだけで決まるわけではありません

 胃や腸から届く情報
 身体の栄養状態
 食欲に関わるホルモン

身体の中では、いくつもの情報がやりとりされています

たとえば、主に胃から分泌されるグレリンは、
脳に働きかけ、食欲を高める働きに関わっています

難しい名前ですが、

身体と脳のやりとりに関わる、情報の一つ

くらいに考えてみてください

そして、身体の中だけではありません

 いつもの食事の時間
 台所から漂ってくる匂い
 目の前のおいしそうな料理

そんなことも、「食べたい」という気持ちに関わります

「お腹が空いた」は、お腹だけで完結する感覚ではありません

身体と脳、そして周りの状況が関わっているのです


💭 空腹の不快感が、イライラに重なることがある

空腹は、ただ「食べたい」と思うだけでなく、
不快な感覚を伴うことがあります

その不快感が、そのときの気分や、
出来事の受け止め方に重なることがあります

 待たなければならない
 思いどおりにいかない
 誰かの一言が気になる

お腹が空いてつらいときには、
普段なら受け流せることも、いつもより嫌に感じられるのかもしれません

大人でも、イライラしたあとで、
「そういえば、お昼を食べていなかった」
と気づくことがありますよね

成人を対象とした研究では、日常生活の中で、
空腹感が強いときほど、怒りやイライラも強いという関連が報告されています

ただし、これは本人の自己報告をもとにした研究です
空腹が直接イライラを引き起こすことや、
子どもにもそのまま当てはまることを証明したものではありません

子どもの姿を見るときにも、
このつながりを一つの手がかりにしてみます

 順番を待っていた
 遊びがうまくいかなかった
 きょうだいに、おもちゃを取られた

 そこに、空腹や疲れ、眠気なども重なっていたら

普段より強く怒ったり、
泣いたりすることがあるかもしれません

もちろん、空腹なら必ず怒るわけではありません

「空腹=イライラ」という、決まったスイッチではない

そのときの身体の状態と、気持ちと、周りで起きたこと
それらを合わせて考えてみます

🌱「血糖値が下がるから」だけでは、説明できない

空腹とイライラは、
「血糖値が下がるから」と説明されることもあります

でも、お腹が空いていることと、医学的な低血糖は同じではありません

先ほどの研究も、血糖値を測って、
イライラの仕組みを特定したものではありません

「イライラしているから、血糖値が下がっているはず」

と判断せず、空腹も含めて、
その子に何が重なっているのかを見ていきたいですね

参考:空腹と怒り・イライラの関連を調べた研究(PLOS ONE/英語)


🌱 子どもは「身体と気持ち」をつないでいる途中

大人も、お腹が空けばイライラすることがあります

では、子どもは何が違うのでしょう

子どもは、

 身体の変化に気づくこと
 それが何なのか理解すること
 周りの人に伝えること
 その状態に合わせて行動すること

こうしたことを、経験の中で少しずつ身につけている途中です

「なんかイヤ」と感じていても、

「お腹が空いたから、イライラしているのかも」

とは、まだ分からないかもしれません

#3 でも触れた 内受容感覚(ないじゅようかんかく)は、
空腹や喉の渇きなど、身体の内側から届く信号を感じ取り、
脳で処理する働きです

けれど、身体の変化を感じることと、
その意味が分かること、言葉で伝えられることは、同じではありません

空腹に気づいていても、遊びをやめたくない
食べたいけれど、どう伝えればよいか分からない

そんなこともあるでしょう

気づき方や伝え方には、子どもにも大人にも個人差があります

だから、
「どうして、お腹が空いたって言わなかったの?」

と尋ねる前に、

「この子は、どこで困っていたのかな?」

という見方も持ってみます

 気づくことを手伝うのか
 伝える方法を一緒に探すのか
 食事へ移りやすくするのか

必要なサポートも、少しずつ違ってきます


🍪 おやつも、大切な「食事」の一つ

ここで、もう一つ考えておきたいのが「おやつ」です

子どもにとってのおやつには、
楽しみに加えて、食事を補う役割もあります

特に幼児期は、一度に食べられる量に限りがあり、
3回の食事だけでは、必要なエネルギーや栄養を
とりきれない場合があります

だから、おやつは「補食」としても考えます

🍙 こんなおやつなら「補食」にしやすい

  • 🍙 小さめのおにぎり
    エネルギー源になる炭水化物を補いやすい

  • 🧀 牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品
    たんぱく質やカルシウムなどを補える

  • 🍌 果物
    種類に応じて、ビタミンや食物繊維などを補える

  • 🍠 ふかした芋など
    エネルギーや食物繊維などを補える

毎回、きっちり計算しなくても大丈夫です

その日の食事を思い出しながら、

「今日は何を補おうかな?」

と、無理のない範囲で選んでみましょう

※食品は、その子の年齢や食べる力、アレルギーに合わせて選び、大きさや硬さも調整してください

🍪 甘いお菓子やスナック菓子はダメなの?

「食べてはいけない」わけではありません

クッキー、せんべい、スナック菓子なども、
子どもにとっては楽しみの一つです

ただ、お菓子ばかりでお腹がいっぱいになると、
食事やほかの食品から栄養をとる機会が減ることがあります

たとえば、

ヨーグルト+果物+クッキーを少し

そんなふうに、
「楽しみ」と「補食」を組み合わせる方法もあります

🕒 「何を食べるか」と一緒に、「いつ食べるか」も

おやつは、欲しがるたびに少しずつ出すよりも、
時間や量をある程度決めておくと、食事のリズムをつくりやすくなります

名古屋市の食育資料でも、幼児のおやつは、
栄養を補う食事の一部であり、
1日1〜2回、時間と量を決めることが示されています

ただし、年齢や食事量、生活リズムに合わせて考えます

「3時のおやつ」といっても、
必ず15時でなければいけないわけではありません

その子の、食事と食事の間をつなぐ時間。

そう考えると、分かりやすいと思います

参考:名古屋市 なごや食育ひろば|幼児期の食事のポイント


🍪 「お腹すいた!」は、何を伝えているんだろう?

では、「お腹すいた!」と言われたら、
どうしましょう

身体が食べ物を必要としているのかもしれません

いつものおやつの時間だからかもしれない
おいしそうなものを見たからかもしれない

疲れや、嫌なことがあった気持ちが、
「何か食べたい」に重なっていることもあるかもしれません

そして、
「好きなおやつが食べたい!」という気持ちそのものかもしれません

でも、すぐに、
 「さっき食べたから、お腹が空いているはずがない」
 「おやつが欲しいだけでしょ」
と、言葉を退けなくてもいい

本人の中でも、

 「お腹が空いた」
 「食べたい」
 「楽しみたい」
 「安心したい」

といった感覚や気持ちが、
まだはっきり分かれていないこともあるでしょう

🔎 「お腹すいた!」に重なる、いろいろな背景

  •  🍚 身体が食べ物を必要としている

  •  🕒 いつものおやつの時間

  •  🍪 好きなおやつが食べたい

  •  🏃 今日はたくさん動いた

  •  😴 疲れている

  •  😢 嫌なことがあった

  •  👀 おいしそうなものを見た

どれか一つとは限りません
いくつか重なっていることもあります

「お腹すいた」を、本当か嘘かの判定で終わらせず、
身体や気持ちから届いたサインとして見てみる

そんな見方もできます

もちろん、受け止めることと、
その場ですぐにおやつを出すことは、同じではありません

「お腹が空いたんだね。夕飯までもう少しだから、どうしようか」

最後に食べた時間や、その日の様子も見ながら、
次にできることを一緒に考えます

自分の状態を伝えたら、誰かが聞いて、一緒に考えてくれる

そんな経験も、身体のサインを伝えることを支えていくのではないでしょうか


🌱 「お腹空いた?」と聞いても、分からないことがある

「お腹空いた?」

そう聞くと、「空いてない」と答える

でも、しばらくして食事を出すと、
よく食べる

そんなこともあります

遊びに夢中だったのかもしれません
そのときは、まだ空腹をはっきり感じていなかったのかもしれません

聞かれたときと、食べ始めたときでは、
身体の状態が変わっていたのかもしれません

「空いてない」という言葉も、そのときの本人の答えです

大人が見た様子と違うからといって、
すぐに間違いにしなくていいのだと思います

本人の言葉も大切にしながら、
食事の時間や、食べる様子も一緒に見ていきます


🪑 お腹が空いていたはずなのに、どうして席を立つの?

ようやくご飯ができて、
食べ始めたと思ったら、もう席を立っている

 「お腹が空いたって言っていたのに」
 「まだ全然食べてないよ」
 「座って食べて!」

用意した側としては、
ついイラッとしてしまう場面です

けれど、

食べたいことと、座って食べ続けられることは、同じではありません

 椅子が合わず、座りにくい
 食べ物のにおいや食感が苦手
 食具が扱いにくい
 近くのおもちゃが気になる
 食事に注意を向け続けるのが難しい

食事には、空腹以外にもいろいろな条件が関わっています

少し食べて、本人にはもう十分だったのかもしれません
食べることに困っていて、席を離れたくなったのかもしれません

自閉スペクトラム症(ASD)のある人の食行動についても、
感覚の特徴との関連が研究されています

ただし、その特徴や程度は一人ひとり違います
診断名や離席という行動だけで、理由を決めることはできません

だから、

「どうして座っていられないの?」

に加えて、

「この子が食べやすい状態になっているかな?」

と、見てみます

#2 で考えた、
「できる力」と「いま使える力」の違いも、ここにつながっています


⚡ \ じりつくんと考えてみよう /

では、家庭ではどんなことができるでしょう

大きな工夫でなくても、
食事の時間や、食べる条件を少し変えてみることができます

🕒 食事まで、長く空きすぎていないかな?

 昼食をあまり食べられなかった日
 いつもより、たくさん遊んだ日
 夕食の時間が遅くなる日

同じ子でも、その日の状態は違います

今日、どのくらい食べて、どのくらい動いたかな?

睡眠や疲れ、帰宅後の過ごし方も含めて振り返ってみます

空腹が関係していそうなら、
食事を少し早めたり、少量の補食を考えたり

夕食がすぐなら、先に食事を始める方が合うこともあるでしょう

試したら、その後の様子も見てみます

 過ごしやすくなったかな
 次の食事に影響しなかったかな
 あまり変わらなかったかな

考えて、少し変えて、様子を見る

正解を最初から決めず、その子に合う方法を探していきます

🍽️ 最初の量は、少なめでもいい

お皿にたくさん盛られていると、
食べる前から負担に感じる子もいます

最初は少なめにして、
まだ食べたければ追加する

「全部食べられるかな」

だけでなく、

「今、どのくらい食べたいかな」

と考えてみます

お皿を空にすることだけが、食事のゴールではありません

🪑 足元と、食べやすさを見てみる

 足が安定するように支えられているか
 机や椅子の高さは合っているか
 食具は扱いやすいか
 食べ物の大きさや硬さはどうか
 テレビや近くのおもちゃが気になっていないか

まずは、条件を一つ変えてみる

そして、その子の様子を見てみます

💬 大人も、自分の身体の状態を話してみる

「お腹空いた?」と聞くだけでなく、
大人が自分の感覚を言葉にするのも一つの方法です

 「たくさん歩いたから、お腹が空いてきたな」
 「少し疲れたから、座って休もうかな」

身体の感覚と、それに合わせた行動を、
暮らしの中で見せていくことができます

子どもが質問に答えられなくても、
何度も確かめる必要はありません

「分からない」も、そのときの大切な答えです


🍽️ 食べた「あと」も、身体を知るきっかけに

食べて、落ち着いた

それでひとまず、よかった

忙しい毎日には、
そこで終わってもいいと思います

もし余裕があるときには、
食べる前と、食べたあとの感じを一緒に確かめてみます

 「ご飯を食べたら、お腹はどんな感じ?」
 「食べる前と今で、何か違うかな?」

言葉で答えられなくても構いません
表情や指さし、身ぶりで伝えることもできます

 食べる手がゆっくりになった
 表情がやわらいだ
 また遊び始めた

そんな姿も、手がかりになります

ただし、それだけで空腹や満腹を決めつけたり、

「ほら、やっぱりお腹が空いていたんでしょ」

と、答え合わせをしたりするためではありません

自分の身体に、どんな変化があったのか

それを一緒に知っていくためです

毎回振り返ったり、正確に言い当てたりする必要もありません

 「食べる前は、こんな感じだった」
 「食べたら、こんな感じになった」

そんな小さな経験が、
自分の身体を知る手がかりになるかもしれません


🔎 今日から、問いをひとつ増やしてみる

子どもが急にイライラし始めたとき

「どうしてそんなことで怒るの?」

と考える前に、
問いをひとつ増やしてみてください

「この子の身体は、いまどんな状態なんだろう?」

 最後に食べたのは、いつだったかな
 今日は、よく動いたかな
 眠くないかな
 喉は渇いていないかな

そして、

 何か嫌なことがあったかな
 伝えたかったことがあったかな

身体も、気持ちも見てみます

それでも、理由が分からないことはあります

すぐに一つの理由に決めなくてもいいのだと思います

大切なのは、

行動だけで、その子を決めないこと

必要なルールを伝えながら、
その子が過ごしやすくなる方法も考えることです


🍚 今日の空腹も、身体を知るきっかけに

 お腹が空くこと
 食べたいと感じること
 食べて、満たされること

そして、
「なんだかイライラする」と感じること

どれも、自分の身体を知る手がかりになります

大人が、子どもの身体の状態に気づくこと

そして子ども自身も、
自分の身体を少しずつ知っていくこと

 「お腹が空いたね」

という、いつもの一言も、
その小さな経験のひとつになるかもしれません

大きくなれば、空腹でイライラしなくなるわけではありません

でも、自分の状態に気づいて、
食べる、休む、誰かに伝える

そんな調整の仕方を、
経験の中で少しずつ見つけていくことはできます

だから今日、
「お腹すいた!」と言われたら、

「身体はいま、何を教えてくれているのかな?」

と、一緒に見てみる

そんなところから始めてもいいのかもしれません


知れば、見え方が変わる。

身体を知ることは、子どもを知ること。
── 381保健室


🩺 気になる様子があるときは

冷や汗、震え、顔色の悪さ、ぼんやりするなどの様子があるときは、「お腹が空いただけ」と決めつけず、そのときの状態に応じて医療機関に相談してください。繰り返す場合も、小児科などに相談しましょう。

呼びかけへの反応が乏しい、意識がない、けいれんしている場合は、119番で救急車を呼んでください。 意識がはっきりしないときは、食べ物や飲み物を無理に口に入れないでください。

食べられるものが極端に限られる、体重や成長が気になる、食事の困りごとが続く場合も、小児科や栄養・発達の専門職に相談できます。

※381保健室は、子どもの身体や行動について考えるための一般的な情報を届けるもので、診断や医療行為を行うものではありません。


📚 もっと知りたい方へ

今回の記事では、詳しい仕組みをすべて説明するよりも、
子どもの姿を見るときの手がかりを大切にしました。

もう一歩深く知りたい方は、次の資料も参考にしてください。


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#3|汗にはどんな役割があるの? 子どもの体温調節と身体のサイン
 身体に変化が起きることと、それに気づいて行動することの違いを考えます

#2|眠くなると機嫌が悪くなるのはなぜ?
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#1|熱が出る前のサインって?
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